歌う時に腹式呼吸が必要な3つの理由


子どもが初めてのおつかいを頼まれる番組をご覧になったことがあるかと思います。その時、子どもたちが不安と戦うため、あるいは自分を勇気づけるためにオリジナルの即興曲を歌いながら歩く姿は、なんとも微笑ましいものです。
ところで、あの子どもたちは腹式呼吸で歌っているのでしょうか?

「歌うときには腹式呼吸がよい」と耳にされたことがあるかと思います。
でもおつかいをしている子どもたちは、腹式呼吸で歌っているわけではないでしょうね。なぜなら、腹式呼吸をしなくても歌うことは可能だからです。
腹式呼吸を使わずとも歌えるなら、なぜプロの方は継続的にボイストレーニングをしているのでしょうか。そこには、やはり腹式呼吸の必要性があるからです。

今回は、「歌うときに腹式呼吸が必要な3つの理由」について順を追って紹介したいと思いますが、まず、はじめに呼吸方法の種類について見てみましょう。
※呼吸方法といっても人間の身体構造上、空気を吸い込み、ためることができる器官は肺だけです。(詳しくは次号にて)

呼吸方法の種類 〜そもそも何呼吸があるの?〜

呼吸方法には、大きく分けて3つあります。
1. 肩式呼吸=運動後、急いで空気を取り込みたいとき自然と行っています。肩が上がりお腹はへこむ。

2. 胸式呼吸=日常の呼吸、たくさん吸い込もうとすると胸が膨らみ、お腹はへこむ。胸式発声では首・肩胸・喉・声帯周りなど発声に関わる筋肉を緊張させてしまう。

3. 腹式呼吸=お腹まわりが膨らみ、肩や胸は上がらない。(寝ている時。赤ちゃんも無意識にしている)深くゆっくりとした呼吸でリラックスし、精神も安定すると言われています。
腹筋・背筋・脇腹の筋肉が、横隔膜の運動をサポートするので余分な力を使うことなく、多くの空気を肺に取り込むことができる。声帯周りの筋肉をリラックスさせたまま発声することができる。

この3つの中で、歌う時には「腹式呼吸」がよいとされています。
では次に「歌うときに腹式呼吸が必要な3つの理由」を見ていきます。

歌うときに腹式呼吸が必要な3つの理由

その1 首・肩・喉に無駄な力が入らない
首・肩・喉周りに無駄な力が入らないため、長時間歌っても声がかれないフォームを作ることができます。発声が楽になり、喉が詰まった声や、喉を閉めた声ではなくなります。声帯にとってストレスが減り嬉しい状態。

その2 ブレスコントロールができる
腹式呼吸を実践する中で、横隔膜の引き下げと腹筋の連動ができてくることにより、吸い込んだ空気をお腹の筋肉を使ってブレスコントロール(吸った息を強く、あるいは細く長く一定量をキープして吐くこと)ができるようになります。
そしてやがては、ロングブレス、スタッカート、ダイナミクス(強弱)、声量が上がることで声に迫力が増し、歌の感情表現の基礎となる土台を築くことができます。

その3 深い声質を作りやすい
重心が下がりお腹の支えを作りやすく、ピッチも安定し、芯がある深い声質を作りやすくなります。

腹式呼吸の習得=歌の上達!?

さて、上記のように3つの理由から見てきましたが、腹式呼吸さえ習得すれば歌は上達するのでしょうか?
いえいえ、残念ながら、腹式呼吸を習得しても、すぐに歌が上達するとは言いきれません。

レンガをひとつひとつ積み上げてピラミッドを作ることをイメージしてください。「腹式呼吸」というひとつのレンガは、ピラミッドの底辺にあたる重要な基礎部分。そしてその上に、以下のようなレンガを積み上げていきます。
・横隔膜が連動するために必要な腹筋を強化
・喉に無駄な力みがなくなり高音が出しやすくなるための声帯の伸縮
・声に共鳴をつける
・声に太さや重みを増す
・良い質のビブラートができる
・音域をひろげる
・伸びやかな声質を作る
・感情が溢れ出る豊かな歌が歌えるようになる
などなど。いかがですか?

「腹式呼吸」を習得したからといって、すぐに上手く歌えるようにはならないかもしれません。でも、底辺のレンガが頑丈であれば、その上にほかのレンガをいくつも積み上げることができるのです。たかが「腹式呼吸」、されど「腹式呼吸」とでも言うのでしょうか。

「腹式呼吸などできなくても、歌えているから問題ないし特に困っていない」と考える方もいるでしょうし、「初めてのおつかい」の子どもたちが歌ったような鼻歌程度の歌であれば、誰にでも歌えるのですから、私はそれで十分楽しいわと思う方もいるかもしれません。でも基礎を習得せずに歌い続けていくうちに、喉を閉める発声になったり、呼吸が浅い歌い方の癖がついてしまい、せっかく少しずつ上に積み上げたレンガがバラバラに崩れてしまうとしたらどうでしょう?
それが結果的には、声帯を痛めて声が出なくなり、振り出しに戻って「腹式呼吸からやり直す」なんてことになるかもしれません。

腹式呼吸って重要な基礎なのですねー。

もしも、「あらら、私って腹式呼吸、出来ていないんじゃないの?」と慌てた方も、落ち込まなくて大丈夫ですよ。
次回以降に「腹式呼吸時の身体の構造」や「腹式呼吸のチェック方法」「自宅でもできるトレーニング法」など少しずつ紹介していく予定です。できないことを見つけて落ち込むよりも、できるようになったことを数えて共に喜びあいましょう。


ASAMI

投稿者: ASAMI

-Voice Trainer/Gospel Director- ゴスペル指導歴13年。亀渕友香&The Voices Of JapanにてGospel活動を始める。幕張ホテルニューオータニ、Four Seasons Hotelクリスマスディナーショー、表参道ヒルズなどに出演。NHK文化センター、産経学園等講師。好きな食べ物は、京都の和菓子。

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