未来を切り開いた1人の女性「ハリエット・タブマン」


♪98 こんにちは、NOBUです。

2月といえば、アメリカでは黒人歴史月間です。黒人=アフリカ系アメリカ人が、アフリカから奴隷として連れてこられ、その後自由を得て、今のアメリカを築いてきたことを思い返す月です。日本人にとって、全く関係のないことのようですが、彼らの背景を知ることで、私は今の生き方を見つめ直すことができたり、生きる力をもらえました。そのきっかけになった、『ハリエットの道 MOSES : When Harriet Tubman Led Her People to Freedom』という絵本を紹介します。

 

ハリエット・タブマンって誰?

ハリエット・タブマンは、1820年頃メリーランド州バックタウンにアラミンタという名前で、奴隷の両親のもとに生まれました。彼女はなんと、7歳から赤ちゃんの世話という仕事をさせられ、赤ちゃんが泣く度にムチで打たれました。その後、母親の名前をもらってハリエットと名乗るようになったアラミンタは、1844年、ジョン・タブマンと結婚させられます。1849年頃、自分の雇い主が死ぬと、ある噂を耳にします。「自分が家族から引き離されて、もっと奴隷が厳しく扱われる南部へ売り飛ばされる」。その時ハリエットは、およそ29歳でした。

 

さて、当時のアメリカは、奴隷について反対する北部と、奴隷を推進する南部の州に分かれており、ハリエットが生まれたメリーランド州バックタウンという場所は、ちょうどその境目に当たる地域でした。南部の奴隷たちは、家畜同様の扱いをされて、奴隷小屋は約5メートル平方ぐらいのもの。正面に小さな窓があるだけで、あとは壁でふさがれていました。家具はもちろんなく、不衛生な環境。そんななか奴隷たちは、朝が明けるとすぐ畑に出て仕事にかからなければなりませんでした。1日の命じられた仕事は、綿花摘みの場合、80~90キログラムともいわれており、単調で想像を超える過酷な状況だったと思われます。

 

逃げる決意

ハリエットは、家族から引き離され南部へ売られることの悲しみ、奴隷としてさらに仕事が過酷になる恐怖から、北部へ逃げる決意をします。絵本の話は、こんなふうに始まります。

 

ある夏の夜、ハリエットは空を見上げ、神にはなしかけた。

「主よ、わたしはあなたの子どもです。

でも、わたしは人間のご主人の持ちもので、ロバのようにこきつかわれています。

そのご主人はいま、わたしをくさりにつないで南部の農場に売ろうとしています。

そうなると、わたしは綿や米やアイやサトウキビの畑ではたらかなくてはなりません。

家族とはもう二度とあえなくなるでしょう。」(p.3)

 

絵本全体を通して、ハリエットは祈る人であったことがわかります。逃亡は、簡単なことではなく、とても恐ろしかったと思います。逃亡奴隷は、捕まると殺されるか、厳しい罰が待っているからです。それでも逃げる決意をしたハリエットの原動力は、この祈りにあったのかもしれません。

 

どんなふうに逃げたのか?

ハリエットは、145キロメートルの道のりをほとんど歩いて、ペンシルヴェニア州フィラデルフィアに逃げ切ることができました。追いかけてくる犬から自分の臭いを消すために川の中に入ったり、人目につかない夜の森を走ったりして、北へと一目散に逃げました。時には、立ち止まることもありました。

私がこの絵本の中で、とても印象に残っているのは、彼女がジャガイモを貯蔵する穴に何日も隠れていた絵です。ジャガイモと一緒にうずくまり、何日も過ごすほど彼女の中には北部への希望と、捕まるのではないかという恐怖が渦巻いていたのだろうと思います。

しかし、なかには彼女を助けてくれる人もいたようです。ある農夫は、ハリエットの体を毛布で覆い、荷馬車の荷台に隠して運んでくれたとか。そんなふうに、初めて出会う1人1人にも、ハリエットは希望と恐怖を感じていたことでしょう。

 

逃げた先での新たな決意

 

しかし自由になってからも、つらい気もちは、きえなかった。

「主よ、わたしはおちつけません。

家族をみんな南部においてきたのですから。」

「家族にあいたいのかね?……

それなら、家族のもとにもどりなさい。

しかし、まずはじめに、

わたしの家にいきなさい。

旅のそなえをするために。」(p.31)

 

北部へ逃げて自由を得た! ハッピーエンド! とはなりませんでした。ハリエットは、自分が残してきた愛する家族と仲間のことが気にかかってなりませんでした。そこで彼女は神に祈り、メリーランドに戻って仲間を北部へ連れてくる決意をしました。ジャガイモの中にまで身を隠し、危険な思いをしてきて、ようやくたどり着いたにもかかわらずです。

私自身がその状況だったら、戻るだろうか……人のために自分の身を危険にさらすだろうか……素直に自分に問いかけたことを思い出します。

 

自由への地下鉄道

ハリエットは、合計19回も南部へ戻り、300人もの奴隷たちを自由の身にしました。どうやってでしょうか?それは、自分も逃げる時に助けられた「自由への地下鉄道」を使ってでした。地下鉄道といっても、鉄道ではなく、奴隷制に反対する人々によって作られた森などを通る秘密のルートや隠れ場所のことでした。ハリエットは、その「駅」でもあった教会などを経由しながら、「車掌」として南部の奴隷たちを北部へと導いたのです。それゆえに、旧約聖書でモーセが、エジプトの奴隷だったイスラエルの民を自由へと導いたこととたとえられ、ハリエットは「女モーセ」と呼ばれたのです。

 

「わたしではなく、主のみわざです。

わたしは、主がみちびいてくださることを

いつも信じていただけなのです。」(p.37)

 

彼女は、最後まで神と話しながら、神に支えられて1913年に天に召されました。

 

未来を切り開いた1人の女性、ハリエット・タブマン。2020年には、アメリカ20$札のデザインにアフリカ系アメリカ人として初めて選ばれるそうです。死後100年経ってもなお、人々の記憶に刻まれているハリエット・タブマン。私たちの未来を切り開くヒントもこの絵本に隠されているかもしれません。

 

 

『ハリエットの道 MOSES : When Harriet Tubman Led Her People to Freedom』

文:キャロル・ボストン・ウェザフォード

絵:カディール・ネルソン

訳:さくまゆみこ

発行:日本キリスト教団出版局

発行日:2014年1月24日初版

ISBN978-4-8184-0880-7


NOBU

投稿者: NOBU

-Gospel Singer & Director- DEUT(デュート)株式会社代表取締役。都内音楽専門学校、YAMAHA、教会などにおいてVoice Trainer、Gospel Directorとして活動した後、日本全国にGOSPELがあふれる世の中を目指しDEUTを設立。日々GOSEPL指導とコンサートに奮闘中!好きな食べ物は、インドカレー、麻婆茄子など辛いもの全般。

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